【怪談系列】『鏡』
私の
知り合いの女性から、ぞっとする話を聞いたので
お話ししたいと思います。
その女性は古いものが好きで、
例えば、椅子とか本箱とか、オルゴールとか。
そういうものを、買ったりもらったりして集めていました。
中でも、アンティークショップで買った、
ヨーロッパ中世ころの鏡台が彼女一番のお気に入りでした。
その彼女がいつの頃からこんなことを言っていました。
自分の部屋にいると、
誰かにみられている感じがするそうです。
ベッドで横になっている時とか、椅子に座っているときとかに。
はじめは気のせいかと思って、気にしないようにつとめていたそうです。
仕事で神経が疲れているために、
そんな気がするのだと自分に言い聞かせていました。
ところが、自分を見つめる視線は日に日に強くなっていく一方で、
いっこうに収まる気配がありませんでした。
そんなことが続いていたある日のこと...
夜、机に向かっていると、
いつもにましてとてつもなく強い視線を感じたそうです。
彼女は、
絶対誰かに見られている。
と思い、部屋の中を見回しました。
そのときに、窓のカーテンを開けっ放しにしていることに気づいたそうです。
彼女はカーテンを閉めようと窓に近づきました。
窓のガラスに自分の部屋が映っている。
不意に背後からの強い視線を感じて、
ばっと振り向いた。
そこには何もなく、ほっとして
何となく鏡台の方に目が向いたそうです。
自分の姿が映っていて、
その背後に何か黒い影が映っている。\
恐る恐る窓の方に振り返ると、
その黒い影とは、電灯に照らされた自分が\
窓ガラスに映っているだけでした。
胸をなで下ろしていると、
さっき振り返って鏡台を見たときに
何か違和感があったことに気づいたそうです。
もう一度、ゆっくりと鏡台の方に振り向き鏡を見ました。
やっぱり、自分の姿が映っているだけで何もない。
しばらく、鏡に映った自分の姿を眺めていて、
彼女は気づいたそうです。
全身から血の気が失せた。と言っていました。
そのとき、彼女は窓の方へ体を向けて、首だけを鏡の方へ向けていました。
ところが、鏡に映っている自分は
ちゃんと正面を向いて、こちらを見つめていたそうです。
彼女の部屋で感じていた強い視線は
鏡に映った自分からのものでした。
彼女はそう私に言っていました。